陣内 久紹(じんのうち ひさつぐ)

 

 

 

 

《略歴》

1955年佐賀県生まれ。高校卒業後、京友禅の重要無形文化財

保持者・故森口華弘氏に師事。

1990年独立。1993年京都市右京区京北田貫町に工房を移す。

1985年日本伝統工芸展初入選。現在日本工芸会正会員。

仕事

蒔糊(まきのり)をつかった手描き友禅のきものをつくっています。蒔糊は昔からあった技法ですが、それは部分的にしかつかわれていませんでした。それを、(故)森口華弘先生がきもの全体につかい、ひとつの独特な表現技法として確立されました。蒔糊の一粒、一粒、形も大きさも同じものがひとつもないので、表情がとても豊かです。じっと見ていると、すべてのものはこの一粒から成り立っているのではないかと思えてきたりもします。そんな蒔糊のもつ多様な可能性を引き出し、表現していきたいと思っています。

蒔糊について

蒔糊は米粉や糠(ぬか)に亜鉛松やリン酸を加え、こねたり、蒸したりした後、板に薄く練りつけ、天日で乾かわかし作ります。それを細かく砕いて何種類かの大きさの蒔糊の粒にします。

 

その粒を、濡れた生地の上に手でふっていきます。蒔糊が乾いた後、全体の量を見ながら、塊をピンセットで弾いて整えていきます。

 

整えて全体に均一に(デザインによっては、ぼかしたり、模様にしたりしますが)なったところで、下から水を含んだ刷毛でぬらし、上から霧を噴きかけたりして、生地に蒔糊を定着させます。

 

それから、染料の発色をよくするために、豆汁(水でふやかした大豆をすりこぎで潰して水に溶かし、濾したもの)を蒔糊の上から刷毛で引いていきます。

 

それが乾いた後、地色を染めていきます。そうすると、蒔糊の部分が染まらずに白い蒔糊の形が残り、白い粒粒が現れます。

 

 

 

 

この粒粒を使い、着物や帯に蒔糊の世界を表現していきます。

例えばー

 

  

「月光」という帯では、蒔糊は波になり、水面にきらめく光となります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「星合いの空」という着物では、蒔糊は夜空に瞬く星々になります

  

 

 

 

 

「雪花」という着物では、静かに落ちてくる雪となります

  

 

 

 

 

「雲取り松葉文様」

模様の縁に蒔糊をふれば、そこに形が現れてきます

これは縁蓋(えんぶた)という技法で、蒔糊の効果的な表現方法のひとつです

 

 

 

 

 

友禅で描かれた笹と蒔糊で表された笹

その表現の違いが奥行きを生み出しています

 

 

  

 

 

このように蒔糊はいろんな表情を現わしてくれる本当に不思議な粒粒です。

これからもこの蒔糊の可能性を追求しつつ、纏ってみたいと思っていただけるような魅力ある作品を作っていけたらと思っています。