陣内 章代(じんのうち あきよ) 


 

 

《略歴》

佐賀県生まれ。大学卒業後、地元の中学校で美術教諭として

勤める。結婚後京都へ。

1992年紬織の重要無形文化財保持者・志村ふくみ氏、

志村洋子氏に師事。両氏の主催する都機工房(つきこうぼう)

で6年間学ぶ。 1998年独立。  

仕事

植物で染めた糸をつかって、紬のきものを織っています。


私が住んでいるここ京北は、京都の街から車で1時間程の山の中。周りを北山杉に囲まれた自然豊かなところです。

そういうこともあり、使う植物染料のほとんどは家の周りに生えているものばかり。季節、季節に、植物たちがなんとなく語りかけてきます。「今が染めどき」って。

たぶんそれは、その植物の持つ精気がこちらに伝わってきたときだと思うのですが。


だから、そういうときはみんなすごく生き生きとしていて、申し訳ないと思いつつも、「ごめんなさい。ありがとう。」と言って、バッサリ切って煮出します。そして、そういうときに染めた色は本当にその精気が宿ったように美しく、いのちを色に捧げてくれたのだと感じます。今ここにあったいのちが、色という新しいいのちとして現れてきてくれたのだと。

大学時代は日本画を専攻していました。日本画は砕いた細かい岩絵の具を何層にも塗り重ね、色に変化をつけていきます。織りは1100本の経糸に緯糸を入れながら色に変化をつけていきます。1100本の経糸の色の変化に緯糸の色の変化が加わると、無限の織り色の世界が拡がります。そこが日本画ととても似ていると思いました。


そのせいか、絵を描くようにきものをつくることが多いように思います。糸は絵の具で、きものがキャンパスのように。

絵を纏(まと)うー すてきですよね。

でも最近、美しく染まったそれらの色色を見ていて、なんとなくこの色自身を生かしたきものを織りたいと思うようになりました。植物で染めた色は、灰汁や鉄、アルミ、銅などの媒染剤で色を定着させます。その媒染剤によって、ひとつの植物で染めた糸でも、その色は変わってきます。その色の変化や濃淡でその植物のイメージを織ってみよう、と思いました。

春、6月の頃、ねむの木の新緑が美しく、その若葉をいただき若緑を染めました。ハッとするように美しい緑で、その若い緑をみていたら、雨に煙る新緑を織りたいと思い「五月雨」というきものを織りました。

photo:豆塚猛

春、隣の空き地に生えている野いばらが可憐な花をつけていました。その花ごといただき煮出したのですが、タンクの中のお湯につかった花びらがとても美しく、その野いばらで染めたグレーの濃淡で、そのときに感じたイメージを織ってみました。


初夏、庭の白い萩がぐんぐんと伸び、つぼみをつけ始めました。あまりの勢いに、その枝を少しいただいて染めてみたら、アルミ媒染で薄いクリーム色、銅媒染で金茶色、鉄媒染できれいな銀鼠が染まりました。その色と白い萩の花の可憐なイメージをもとに、三色で格子のきものを織りました。


もうしばらくは、そんなふうに植物と色と対話しながら織っていきたいと思っています。


そしてやっぱり、絵のようなきものも織りたいと思うのです。